Message

Spring

私達は二つのことをバネにして製品の開発を行っています。
ひとつは、生の音と再生音との隔たりを克服したいという気持ち。
もう一つは、『今のオーディオが面白くない』と言う気持ちです。何故面白くないのかと自問すれば、それは、—再生技術の未熟さを省みず、音の悪さを録音フォーマットに責任転嫁する。ユーザーに背を向け新しいフォーマットを要求する(あくまで市場のニーズであるかのように要求する)。再生技術は未熟なままだから、新しいフォーマットは当然空回り。だからちっとも音が良くならない—からであり、現行フォーマットからユーザーの納得する音を出せないからに他なりません。何故それが出来ないのでしょうか?

Trap

楽器を駆使して音楽を生み出すのが演奏家であり、テクノロジーを駆使して音楽を蘇生するのがオーディオデザイナーです。どちらも主体は人間であるはずですが、近年のオーディオデザイナーはテクノロジーという道具に振り回されているように見受けられます。
テクノロジーとは「人間の都合の良いように自然をコントロールする」ための道具であり、当然のことながら「あるがままの自然」を許しません。自然の持つ牙を抜いて無害化する—これがテクノロジーの本性です。
近年のオーディオデザイナーはこのことを理解しておらず、テクノロジーに対してあまりにも楽観的で無用心でした。今日多くのリスナーが音と共に自己を超えて行く「冒険者」にはなれず、音の「検閲者」としての役割を押し付けられているのは、オーディオデザイナーの無反省なテクノロジーの投与による副作用です。
安易なテクノロジーの投与は、音の鮮度を「確実に」殺します。なによりも音の「鮮度」が、リスナーをエクスタシーに導くのであって、鮮度を失った音からは何のドラマも生まれず、苛立ちと猜疑が募るばかりです。
それゆえ私達47Laboratoryにとって、今日のオーディオシーンのなかに在ってオーディオを思考することは、墓を掘って生きた人間を探すのと同じことです。
私達は、「音楽とは何か?」、「音楽に何が出来るのか?」といった—音楽の可能性—を常に問い続け、ここを出発点として日々オーディオを考えるように努めています。

Point of contact

音の鮮度がリスナーをエクスタシーに導くと申し上げました。それでは音の「鮮度」は如何にしてリスナーに知覚されるのでしょうか?
たとえばオーボエ奏者の唇とリード、あるいは打楽器奏者のスティックとシンバルのように、演奏家と楽器がふれあう「接点」の音に「鮮度」が宿ると私達は考えます。何故なら、この「接点」にこそ演奏家の意志とエネルギーが集められ、迸っているからです。
もし、この「接点」の音を鈍らせることなく克明にトレースできれば、リスナーは音の「鮮度」をはっきりと知覚できるはずです。私達オーディオデザイナーはそのことから逃げ出してはならないのです。

Acceieration

演奏家と楽器が触れ合う「接点」の音は、オーディオ的にいえば強い強度と複雑な波形を併せ持っています。これを克明にトレースするためには、コンポーネンツは低域から高域までのすべての帯域において、急峻な立ち上がり、立下がりスピードを備えていなければなりません。しかしこれは生半可なことでは達成できません。何故なら、この「接点」の領域においては、一般に知られた(アンプ等の)ハイスピード化の手法がほとんど通用しないからです。
そのために私達は次のようなコンセプトとテクニックによってアプローチを行っています。

Concept

1.最もシンプルなものだけが、複雑さを受け入れることが出来る。
2.テクノロジーの介入を可能な限り排除する。
3.測定器に依存せず、自分達の耳で判断する。

Technique

1.部品を極限まで減らし、信号経路を極限まで短縮する。
パワーアンプmodel4706Cの回路部品点数は9個/ch(アッテネーターを除く)、信号経路の長さ(部品自体の長さを含む)は32mmです。MCフォノイコライザーmodel4712については25個/chと44mm/chであり、 DA コンバーターmodel4705については22個と35mmです。
これが私達の重要なテクニックであり、その成果です。ここには「マジック」は一切存在しません。音の鮮度を殺さない—そのために有効なテクニックは、今のところこれ以外には考えられません。

2.回路とシャーシーを等価にデザインする。
電気は「善」で振動は「悪」、という対立する構図のなかで振動を捕えている限り、生き生きとした音は出せません。
電気も振動もルーツをたどれば同じエネルギーであり、振動を傷つければ電気も傷つけられます。たとえ振動の一部を熱や機械的な仕事で消費しても、その変換プロセスにおいて生ずる振動伝達の遅れと「変調」が、音の「鮮度」を殺します。
「遅れ」と「変調」を減らし、電気と振動の時間的なズレを小さくする—これが振動に対する最もポジティブな考え方であり、私達はそれをシャーシーデザインにおいて実践しています。

Pleasure

私達のプロダクツは「正しい音」を伝えるために作られたものではありません。レコードやCDといったソースには「原音」は存在せず、それゆえ「正しい音」も空虚な概念でしかありません。
私達のプロダクツは、リスナーをエクスタシーに導くための道具です。「より楽しい」音こそ、より「正しい音」なのです。
もし貴方が私達のプロダクツに興味をもって下されば、これ程うれしいことはありません。ぜひ私達のプロダクツを手にとり、質感を確かめ、音を聞いてください。解っていただけるはずです…..